カイザー31番 / Kayser 36 studies no.31 Allegro molto agitato (Svecenski/G.Shirmer)
「先生、僕にとっては15小節目が難しいです。。。」
「そこが難しいってわかったということは、きちんと勉強してきた証拠!
実は、そこが難しいと感じるのは あなただけではないのよ。
そして、先ほどの演奏をもとに、
1.15小節目の練習方法
2.41-42小節目の注意点
3.曲の性格
についてお話しするわね。
***********
1. 15小節目 練習方法
1.まず、ひとつひとつの音をゆっくりみてみましょう。
2.音程をきちんと把握する。
*4指を下げてGをとるので、その音と、G開放弦を一緒に弾いて、音程が正しくとれているかきちんと確かめてみましょう。
*同じことが3指でとるDの音にもいえるので、その音もDの開放弦で音程を確認して、正しくとれるようにしましょう。
3.指の置きかたをきちんと理解する。
今、少し弾いてみてわかったかもしれないけれど、2,3,4指が全部くっついているかのように指をおくことになるわね。その感覚をしっかり理解しましょうね。
4.音程を和音の一部として理解する。
そうしたら、重音として弾いてみましょう。
左手が動くのは、AからBにいくときなので、最初のうちは、あわてずに、少し時間をとっても、きちんと左手を移動してから、弓を動かすようにしましょう。手の移動ができていないうちに弓を動かさないように、きちんとコントロールを。
よりしっかりと手と耳を鍛えるために、
Aの最初の重音とBの最初の重音を往復したり
Aの3つめの重音とBの3つめの重音のふたつを往復する
という練習を加えることもできます。
また、Aのすべての音をコードとして弾き、Bのすべての音をコードとして弾く を繰り返すこともできます。
上記2つの練習をすると、手、指も鍛えられますね。
5.音程と、左手の感覚がつかめたら、楽譜通りに、まずはゆっくりと弾いてみましょう。ひとつひとつの音がきちんと聞こえるように、そして、ひとつひとつの音の長さも同じに保たないといけません。
6.速く弾く場合には、弓を少なく使いますが、その際には、弓のコンタクト(しっかりと弓の毛が弦を捕まえている状態)を失わないようにしなければなりません。
7.最終的には、クレッシェンドもありますから、その際には、弓と弦との接触点(サウンディングポイント)をどちらかというと指板のほうから、駒のほうへ少しずつ移動することもできますね。
2. 41-42小節 注意点
以下の部分はきちんと指示通り第5ポジションにとどまったまま弾きましょう。
どこでポジションを変えるのかわかりますか?
そう。42小節目(上の譜例では2小節目)の3拍目です。
41小節目の2拍目でファーストポジションに下りてしまうと、4拍目で少し困ってしまうでしょう? さっきみたいに。(笑)
3.曲の性格
そして、忘れてはならないのが、この曲の性格(どのような感じの曲なのか)を考えること。
Allegro molto agitato とありますね。
Allegro=快活な ->速く
molto = とても
agitato = agitated, どこか興奮した感じで、急き込む感じで
このようなキーワードをこの曲にのせるとしたら、あなたはどんなテンポを選んで、どんな風に弾きますか? ぜひ考えてみてね。」
ヴァイオリンを教えることを通して世界を知る
私の生徒たちは、子供から大人まで、そして、中国系、台湾系、韓国系、日系、過去にはもちろん純粋なアメリカ人、そして、インド系、ヨーロッパ系、など。これまでに、さまざまな人種の方々と交流をしてきました。
今回の伝染病に関しても、みなさんそれぞれスタンスが違います。
生徒たちのなかには、どうしても対面でのレッスンを希望する というもの、
なにが起こるのかわからないからオンラインのレッスンにしてほしい というもの、
しばらく休みます というもの、
対面のレッスンをしたいけれど、ソーシャルディスタンスはどのようにとるのですか?
オンラインレッスンになると、どのような感じになるのですか? など
質問を投げかけてくださる方々、本当にさまざまです。
状況も刻々と変わっていたので、まだまだ、「明日のレッスンはどうされたいですか?」と各生徒にメールで連絡をして、要望を聞いてからのレッスンが続いています。
ひとりひとりと真摯に向き合い、それぞれに違った対応をしていますので、とても大変ですが、やりがいもあります。
レッスン中の距離が気になる場合には、お互いにマスクをし、2メートルの距離をおき、普段、1つつか使わない譜面台も、生徒にひとつ、私にひとつ、と2つ用意し、お互いの楽譜を使います。楽譜の書き込みや、譜めくり、楽譜の交換、も、普段は私がしていますが、ほとんど生徒にしてもらい、鉛筆なども、気になるようであれば、持参してもらいます。
オンラインのレッスンをはじめたけれど、楽器の調弦がまだまだできない場合には
ときに、レッスン以外の時間に、親御さんに楽器をもってきていただいて、調弦だけしてお渡ししたり、
調弦はまだやってみたことがないけれど、挑戦してもらえそうな生徒には、チューナーを買ってもらい、調弦の方法を教えて、大体でも、できるところまでもっていってもらうように導いたり、
オンラインレッスンだけでは不十分と思うものには、完璧なものはできないけれど、その生徒にあった録音を送ったり、
本当にさまざまな対応をしています。
現在、アジア系の生徒が多いのですが、この伝染病に対してのスタンスも、不思議とだいたいお国柄があらわれます。
とても大変な時期ですが、オンラインでできること、できないことを知ったり、生徒たちとの交流を通じて、お国柄を感じたり、とても勉強になっています。
まだまだ長くなりそうで、気が遠くなりそうですが、永遠には続かない ということをこころに、歩み続けます。
ヴァイオリンの弦が古くなるとどうなるか (まねしないでね)
先生のヴァイオリンの弦は今、怖ろしいほど古くなってしまっています。
弦がものすごく古くなるとどうなるかというと:
弓を弦から離したあとに、ピッチが下がってしまうのがわかりますか?
ひどいね。(笑)
みんなはここまで古くなる前に、きちんと弦を新しく張り替えましょう。
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追記:弦を張り替えた後、同じように開放弦を弾いてみたのがこちら。
弦はまだ不安定な状態ですが、録音の設定などは、ほとんど同じです。
弦のブランドが違うことも大きな差を生む原因でもありますが、
怖ろしいほどの違いです。
一応、同じように調弦はしてあるものの、ピッチがまったく別ものに聴こえますね。
新しい弦は、弓を弦から離したあとにも、同じピッチを保っています。
弦があたらしいので、音量もありますし、音もクリアですね。
弦はきちんと交換しなければいけません。
ヴァイオリン オンラインレッスン
州からの命令がでてから、20日以降、状況が大きく変わり、音楽学校の生徒たちとは対面レッスンができなくなり、オンラインレッスンのみ となりました。
最後に直接、生徒たちと会えたのは、19日(木)です。
もちろん、その前からも、対面のレッスンを怖れる親御さんたちも多く、17日から希望する生徒たちはオンラインレッスンに切り替えています。
17日にオンラインレッスンをした際には、私は経験があったのですが、生徒たちが慣れておらず、メモをとってもらったり、次の週への課題を書いてもらったり、なかには調弦もままならない生徒たちもいるなか、オンラインの環境下きこえてくるものは、音質が非常に悪く、そのうえ、お互いのコミュニケーションもとりにくく、正直にいってしまうと、これをレッスンと呼べるのか?! と感じるものでした。
過去には、オンラインレッスンをした経験もあり、その際にはここまで問題にならなかったのに、一体どうしてしまったのだろう??!! この期間が永遠に続くわけではないにしても、私はこのまま仕事が続けていけるのだろうか、このようなレッスンで料金をとるのはどうなのだろうか? と、おそろしいまでのストレスを抱いてしまっていました。
もう辞めるしか方法はないのでしょうか。。。??そこまで落ち込んだ後、なんとかしなければ!となんとか自分を奮い立たせ、3つの改良(プラス1)をはかりました。
1. インターネットのスピードをあげる
契約しているプロバイダーに相談し、実行したのが、インターネットのスピードを上げることです。お値段は変わらないと教えていただいたので、試す以外にありません!
インターネットのスピードは
(speedtest,net) で測ってみました。
今日の結果はこちら:
以前はダウンロードスピードが30台だったと覚えています。
私の周囲には Wi-Fiは健康上あまりよろしくないのでは? と考える人が多いので、今だにケーブルを使っていますが、それは問題ないようです。
2. マイクとイヤフォンを使用する
そして、イヤフォンとマイクが一体化されているものをひとつ買ってみました。
この小さなウイングで耳にフィットするようになっているので、レッスン中に頭を動かしても外れることがありません。楽譜に手を伸ばしたり、指の角度や、手のポジションをみせるために、カメラに手を近づけるために立ち上がったり、動いたりしても、なんのその! 耳から外れることなく、まったく問題ありませんでした。
はじめて 音を聴く ということを試したときには、音がなんとなくメタリックな気がしたのですが、今日、実際にはじめてオンラインレッスンで試した際には、あまり気にならず、生徒たちにも(音質は定かではありませんが)よく聞こえる!と言ってもらえていたので、とりあえずはよしとしようと思います。
3. 使用プラットフォーム以外はきちんと閉じる
使用するプラットフォーム(ズーム、スカイプ、フェイスタイムなど)以外を開いている場合、Task Manager の Process をみるとわかるのですが、使用メモリーがかなり大きくなる場合もあるので、必要なもの以外はきちんとクローズしてしまいましょう。
そして もうひとつ(プラス1)
4. Wi-Fi使用の場合は、ルーターに近いところで
これはWi-Fiをお使いの環境でしょうが、音楽学校からルーターに近いところでレッスンを行うように というアドバイスもはいってきました。こうすることで、だいぶ環境がよくなるようです。
以下、オンラインレッスンを考える際に知っておきたいことを掲げておきます。
プラットフォームの選択
私はこれまで、Skype (スカイプ) と Zoom(ズーム)を試しました。
Zoom(ズーム)
Zoomは複数の人間が集まって、会議やセミナーなどができる無料のプラットフォームです。
音楽学校には、さまざまなところにお住まいの先生方がいるので、過日のミーティングは Zoom を使用しました。
その際には、ミーティングをホスト(開催)してくれる先生が、インヴィテーション(招待)やミーティングIDを送ってくれ、それをもとに、簡単に参加することができました。
生徒とはじめてZoom使用した際には、私がミーティング(=レッスン)の日時を前もって決めて、ミーティングID・リンクを取得。その情報を生徒に送り、生徒がそのリンクをクリックするだけで、レッスンができる と想定していたのですが、それが叶いませんでした。
生徒の親御さんが、私が取得したものとは別のミーティングIDを取得し、それに私が参加しようとしても、私は別のミーティングに参加中になってしまい、そこから移動できない というような場面にも遭遇。そのときは、音楽学校からだったのですが、たまたま私が使用していたレッスン室のインターネット環境が非常に悪かったこともあり、結局、親御さんと電話で話をしながら、導いていただき、Zoomで生徒の顔を見られるまでに、30分ほどかかってしまいました。
こういうときにでも、よい方だと、”We are having fun ! Thank you for your patience !!" (私たちは楽しんでやってますから!我慢強くいてくれてありがとう!)とお互いに声を掛け合えるんです。こういうの、素敵ですよね。
たぶん、よい方法があるのだと思いますが、このとき以来、Zoomは使用していません。
追記:今日(2020年3月29日)私は、恩師に頼まれて、再度Zoomを使用してみました。恩師が教える大学でもZoomでレッスンをしなければならなくなったので、一緒に試してみてほしいと。先生は、ミーティング時間を設定しようとされましたが、それをしないほうがよいかもしれない、なるべくプロセスはシンプルにしたほうが問題が少ないだろう旨を伝え、私は先生のZoom IDをもとに join the meeting をクリック。問題なくすぐにつながることができました。先生の楽器はとてもよいものなので、弓1本と半分くらい、私は弓1本分 PCのマイクから離れたところに楽器がくるようにしてみると、お互いの音も、声も、大きな問題なくよく聞こえました。つまり、イヤフォンやマイクを使用しなくても、問題ありませんでした。動画像も大きな問題はなく、またdelay(遅延)もありませんでした。
Skype(スカイプ)
スカイプは、私はもう何年も親しんでいるプラットフォーム。オンラインテレビ電話です。お互いのスカイプネームやスカイプIDを検索し、インヴィテーションを送れば、もうすぐに無料でつながることができます。
セミナーのようなものですと、この作業がたいへん面倒になると思いますが、生徒と私は基本的には知っているもの同士なので、この作業はまったく問題になりません。
テキストを送りあうチャットもできますし、今日、スカイプでレッスンをした生徒は、レッスン中に楽譜をスカイプで送ってくれました。(これは私も学びたい!)
生徒の多くがスカイプを希望しますし、私も過去のオンラインレッスンはスカイプを使用していたので、今後もこのプラットフォームを使用していくことになりそうです。
その他、Google Duo, FaceTime を推奨する先生方もおいでです。
本当に正直なところをお話しすると、私はまだオンライン「だけ」のレッスンはおすすめできません。
ただ、普段ついている先生とやむをえない事情で、どうしても会えないときにオンラインレッスンを使用する場合や、別の先生に少しアドバイスをもらいたい、オーケストラ曲などでの指使いの決め方がわからない、など、オンラインレッスンで充分に足りる、満足感を得られる場合もあると思います。
オンラインレッスンの良い点
*世界どこにいても、レッスンをすることができる。
*レッスンに通うための時間(移動時間)や費用(交通費)がかからない。
*普段、慣れている自宅での環境でレッスンを受けることができる。
*定期的にレッスンに通えなくても、レッスンを受けることができる。
*早朝、夜遅くなど、音楽学校が開いていない時間でも、レッスンをすることができる。
オンラインレッスンでは充分でない点
*本来の楽器の響きがお互いに感じづらい。
*音色に関してはオンラインだけでは判断しづらい。
*先生は生徒の身体に触れることができないため、姿勢、手、指、腕などの位置や脱力の感覚を生徒がとらえにくい場合もある。
*あまり小さなお子さんの場合には、コミュニケーションがとりづらく、親御さんのサポートがない場合には、レッスンが難しい場合もある。
ただ、私自身、これからたくさんのオンラインレッスンをしていくので、画面を通してでも、充分でない点が補えるような指導法を見出していけるようになるかもしれません。
1週間前には、かなり不満足でしたが、環境を整え、必要なものを使うことで、新たな光をしっかりと見出すことができました。これならば、自分の生徒たちに、オンラインレッスンで今の時期を一緒に乗り越えましょう!ということができます!
また、動画や録音を送る(送りあう)タイプのオンラインレッスンも可能なので、いろいろ工夫を重ねていきます。
篠崎ヴァイオリン教本1巻 49番 むすんでひらいて
「1段目の3小節目、ふたつめのAの音がどうしても短くなっちゃうね。
きっと、次のところのことを考えているからね。(笑)
レッスンのときに、先生が弾いたのを聞いてみても、ぼくのとの違いがわからないって言ってくれた。
そういう風にきちんと言えることはとっても良いことよ。
今日は、あなたの体調が少し思わしくなかったので、スカイプのレッスンになってしまったから、一緒に弾いて感覚をつかんでもらうことができなかったので、先生が録音したものを参考にして練習を続けてみてね。
だいたいだけれど、今日弾いていたテンポになっているはず。
暗譜はできているもの。来週、会えるといいね。おだいじにね。」
A=441 quater note=80
A=441, quater note = 105 (added on 3/29/2020)
急いでつくったので、ちょっとオカシナ感じもあるかもしれないけれど、参考にはなると思います。
追記 on 3/29/2020
「移弦がまだ少し難しいかしら? その場合には、こんな風に練習してみてね」
この場合は、Aオープンストリングを弾く際にいつも3指を離してしまっていいですよ。
A=441, quater note = 50, 65, 80
メトロノームの設定が3種類ありますので、自分にあったもの、もしくは3種類全部を練習してみるといいですね。もし、速すぎる場合は、そのメトロノーム設定のものでは練習せずに、ゆっくりのものだけにしばらく時間を使ってみましょう。
(added on 3/29/2020)
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外出自粛の命令により、私たちは音楽学校でも対面のレッスンはできなくなりました。音楽学校の生徒たちとはオンラインのレッスンをしてみてはいますが、正直、音質が悪く、また、姿勢などを直接直してあげることもできず、私自身としては、よいレッスンとはいえません。でも、できるだけのことをがんばっています。
すべての外出が禁止されているわけではないので、今日はまだ自宅の生徒のうち(音楽学校とは別)数名の希望者を教えました。マスクをし、生徒との距離も2メートルくらいとるようにしています。(人との距離においては、命令のなかにこの距離が記されています。)
外出自粛はでていますが、買い物は許されています。命令のなかに、重要な仕事につく人間だけが外に仕事に出かけてもよい、というような記述がありますが、これは本当に重要な仕事??と感じるような、プロによるこの住宅地域の芝刈りも行われていました。(延期しても大丈夫な気が。)外で散歩している人々も、遊んでいる子供たちもみかけました。
スーパーは閉店時間が約2時間ほど早まるようなかたちで営業をしています。
夜8時少し前にお店にいくと、2日前よりも、より品薄になっていました。
別のスーパーに行くと、もう閉店です 明日7時に開くから! と入れてもらえませんでしたが、このようにみなが早めに自宅に帰り、家族と過ごすというのは、なんだか健全な気もします。
今週は、毎日、刻々と変わる状況への対応に追われ、また、ありがたいことに音楽をする友人が私を頼ってきてくれたこともあり、多くの人との急を要するメールでのやり取りや、なれないオンラインレッスン(Zoomを初めて使いましたが、かなりてこずりました。。。)などに、ずいぶん気疲れてしまいましたが、明日、あさっては、残念ではありますが、生徒たちのレッスンがすべてキャンセルになってしまったので、少し時間がゆっくりと流れることでしょう。
ヴァイオリン奏者の腱鞘炎 治癒過程 その3
左手の腱鞘炎発症後約4ヶ月目の状態
2020年3月17日(2日前)に、カイロの施術に行ってきました。
11月20日頃に発症した左手首・親指の腱鞘炎は鋭い痛みはなくなったにせよ、まだ完治はしていません。
はじめてはずす際には少し勇気がいったサポーターは、10日前くらいからはときどきはずしてみたりしていますが、やはりあったほうが安心という感じ。前述の通り、激しい、鋭い痛みが走ることはなくなりましたが、まだ違和感や、親指や手首の角度によっては、瞬間的に痛みが走ります。
ここ3週間ほどは 親指の腱のうえを軽くなぞると、zzz, びりびりとしたような神経の感覚が親指や人差し指に伝わります。これはどういうことでしょう??
ヴァイオリンは レッスンの最中に必要な場合に弾く、また、自分自身のための練習は、だいたい1日に1時間、弾いても2時間くらいまでの範囲内で、その日の手の状態や、日常の忙しさによって 弾かない日もありますが、少しずつとりくんでいます。正直、長く(といっても2時間以内)弾くと、その後や翌日には調子が悪くなる(痛みがでる)ので、そのたびに少しだけ肩を落とす状態です。
上の写真 は今日3月19日に撮ったもの。本当に少しですが、腫れて盛り上がっています。写真よりも自分で見るほうがはっきりとわかります。正直、これは腫れているのではなく、私の身体はもともとこのようにできているものなのだとしてしまいたいという気持ちがありました。
腫れがある場合には徹底してアイシング
カイロの先生におめにかかると、まだ少し腫れているから、徹底して冷やさないとダメですよ と真剣なまなざしで少し叱ってくださいました。ありがとうございます。
自分のなかでは、ちょっと軽く考えていましたし、正直、アイシングをするのに飽きてきて、面倒だと感じる気持ちから、ここのところ、アイシングをさぼっていました。
先生は、私も同様、自然治癒を信じてらっしゃるので、腫れている間は徹底して冷やしてください とのことでした。
きちんと関節のズレを調整する
左手首は可動域が普段よりも小さくなっていることに最近気がつきました。
先生にみていただくと、ずれていますね~ とおっしゃりながら、音をたててアジャストしてくださいました。
ズレがあると、身体の動きが制限されたり、身体に負担がかかり、痛みがでたりしますので、その点も忘れないようにしたいですね。
私の場合は、問題のある左手首周辺だけでなく、どちらかというと関節がゆるくなってしまっているようです。
筋肉を強化する
私の腕や、手首を強化する という可能性も教えていただきました。
もともと、右にはテニス肘のような問題(痛み)が 最近は常にあるので、その点は筋力の衰えも関係あるかもしれないと気づかせてくださいました。
先生に紹介いただいたエクササイズは以下のものとだいたい同様でした:
Michigan State University Rehabilitation: Wrist and Forearm Strengthening Exercises
Thank you, Meg Amendt for the wonderful video.
I'm a violinist/teacher who has tendinitis on my left wrist/thumb and trying to overcome with it. I was introduced similar exercises by my chiropractor and wanted to list your video here.
これくらいなら、できると思いますので左手もやろうと思います!というと先生は まだダメです!と。私はこれくらいしっかり言っていただかないとダメですね。治癒の過程で強くなっていくので、まずは。そこからです。とのこと。
実は、今の状態では腕立て伏せの準備の姿勢がとれません。
左手首が耐えられないのです。これ、なんとかしたいものです。
カフェインや甘いものを極力避ける
カフェインや甘いもののとりすぎは、関節をゆるくさせるとのこと。
ゆるいとは一体どのようなことかしら?と今だに私自身はしっかり理解できていないのですが、現時点では、ゆるいとずれやすくなる という風に理解しています。
私はカフェインや甘いものも好きなので、たくさんではありませんが、毎日摂取しています。スティックコーヒー(ヴェトナム風コーヒーのそれがあるのです!)は私の毎日のおめざですが、少し考えたほうがいいかしら。。。でも、それよりも今は少し筋力を強化することで対応したいです。だって、少しくらいは楽しみが欲しいもの。
正直、腱鞘炎と向き合うことに飽きてきました。もう、そのことを気にして、ケアをし続けるのがイヤになってきています。でも、まだときに痛むので、自分を励ましながら、アイシングを続けます。
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昨日、スーパーに行きました。お値段がよいという理由でそこにいくのですが、冷凍食品はほとんど売り切れでした。
65歳以上の方は外出を控えるようにという公的な指示もでています。
スーパーによっては、閉店時間を1時間から1時間半ほど早めているところもあり、またレジに並ぶ際には、65歳以上の方を守るために、彼らは別のラインに並ぶ(彼らのためだけのライン=列をつくる)という案が表示されていたお店もあります。
ラジオでは、65歳以上の方々だけがお店に入れる時間帯をもうけるという案もある という話もききました。
私は今日、生徒たちの希望により、音楽学校で、対面レッスン、オンラインのレッスンをします。公的な指示にできるだけ添うように、大きめのレッスン室を選び、生徒たちとの距離をいつもよりとるようにして、マスクも着用する予定です。
レッスン室には窓がなく、換気が悪いので、生徒の出入りの際にドアそのもので空気を少し扇いだり、コロイダルシルバー水(colloidal silver = silver water: natural antibiotics)をルームスプレーのようなかたちで使用し、生徒たちがなるべく心配せずにレッスンができるよう努めます。
「わ~!!先生がいる~~!!」
音楽学校では 先生方の日曜日のミーティングをもち、現地校やほかの音楽学校は閉めてしまったけれど、私たちは、生徒たちのニーズによって対応しながら、レッスンを続けていこう!という決定を下しました。
けれども、2日後の今日の午前中に突然、学校を閉めなければならなくなった と連絡が入りました。
「なぜ現地校の措置に従わないのか? このようなときにも利益を追求するのか?!」
と クレームする親御さんたちも多々あったそうで、学校の名声を保つためにも 私たちは、(公的には)今日から2週間はオンラインでのレッスンのみを提供する と移行せざるを得なくなったとのことです。
とても残念なことに、音楽を教えるという仕事は非常に軽視される場合があります。
私たちは、学校がお休みになって、アクティヴィティーが少なくなってしまう生徒たちのために、そして、このようなときでも、できるだけ日常に近いかたちを保てるように、と考えた結果だったのですが、本当に残念です。
けれども、生徒たち、そして、関わるすべての人々の安全、健康はそれ以上に大切です。
今日は学校で教える予定にしていたので、緊急に生徒たちと連絡をとり、今日のレッスンをオンラインにするなり、延期するなり、忙しく対応しました。
「わ~!!!先生がいる~~!!」
私は過去にもオンラインで指導した経験がありますが、今日突然にオンラインで教えることになった2人の生徒たちにとってははじめての経験だったよう。画面上で手を振る私に、生徒たちはとても楽しそうになんだか興奮気味でした。
私が彼らを教えている1時間半くらいの間にも order of the local health officials (地域の防疫官からの正式な指示)が入ってきた、とその後レッスンをする予定だった頼れる高校生の生徒が教えてくれました。5ページにわたるものでしたので、今日のこの生徒のレッスンは取りやめとし、今後をまた相談することにしました。
今日は午前中にカイロの先生のところに行き(腱鞘炎はまだ完治せず)、スーパーに立ち寄ると、入店を制限しているところもありました。外には列ができており、生徒たちへの対応を考えるとそこまで時間がなかったために、失礼しましたが。
刻々と状況は変化しています。
先生、コンサートが延期になっちゃった。。。
「先生、コロナのせいで、僕たちのコンサートが延期になっちゃった。
僕はとっても楽しみにしていたのに。。。
ねえ、この音楽学校の生徒たちのなかには、このコンサートにでる生徒たちが何人もいるでしょう? そのみんなで一緒に練習できる?」
「すばらしい会場でのとても大きな規模のコンサートだものね。
残念だけれど、その規模のコンサートは今はできないわね。でも、キャンセルになってしまったのではなく、延期だから、希望をもってそのときを待ちましょう。それまでにもっと上手になればいいわ!
ガヴァナーは250名以上の大きなイベントはできないけれど、小さな集いは大丈夫って言っていたわ。あなたのアイディアはちゃんとこの音楽学校のディレクターに伝えておくからね。いいアイディアをありがとう。」
「先生、リハーサルがなくなっちゃったから、ファーストヴァイオリンのパートを先生が弾いてくれる?僕はセカンドヴァイオリンだから」
「もちろん、いいわよ!」
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「先生、学校がお休みになってしまったので、私はしばらくいろいろなお稽古事をお休みすることにします。母が学校にもそう伝える予定ですと言っていました」
「事情を伝えてくれてありがとう。音楽学校は基本的に個人のレッスンなので、レッスンを続けている人たちもいるわ。今後、レッスン室のドアノブを毎回拭くようにしたり、手を洗うなどもきちんとして、また、先生との距離を少しとるようにすることもできるし、もし希望であれば、オンラインでのレッスンもできることになったので、もし続けられそうだったら、いつでも連絡してね。」
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「先生、高校がお休みになってしまったから、僕は先生とのレッスンをもっととりたいです! 音楽学校がお休みになってしまうのなら、先生のお家にいくよ!」
「そうね。いつも学校で忙しくてなかなか練習ができないから、ある意味チャンスと捕らえることもできるわ。この音楽学校の先生たちはみんなできるだけ教え続けようとがんばっているの。だから、個人的にお休みをする生徒たちはいるけれど、この学校が閉鎖になってしまうことはないと思うわ。あなたはこの学校の生徒だから、あなたがレッスンをしたいと思う限り、先生はここにくるから、大丈夫よ。心配しないで。あなたの熱心な気持ちを伝えてくれてありがとう。」
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しっかりと情報を得て、自分でできる準備をして、怖れすぎずに、こころを落ち着けて、自分で判断をして、一緒に歩みましょう。
ヴァイオリンの先生である私が考える「才能」とは?
先週、「先生、お元気ですか?」とタイトルした記事で、過去に教えていた生徒が、他国に行ってもがんばっていて、自分が希望する大学のヴァイオリン専攻の学生として受け入れてもらうことができました。という報告のメールをいただいた旨を綴りました。
そのなかで、その生徒について「その頃から才能にあふれている感じがあった」という形容を使ったのですが、とてもありがたいことに以下のような質問をいただきました:
「才能に溢れている」って、どういうところで感じるものなのでしょうか?
これはとてもすばらしい質問で、かつ、大切なことだとなので、今日は、この「才能」について考えてみようと思います。
実は、ご指摘をいただいた部分を書いているときに、私自身「この表現を使ってしまっていいのだろうか?」という小さな躊躇がありました。音楽、ヴァイオリンだけでなく、いろいろな分野において「才能」という言葉で片付けられてしまうことがよくあることを、私自身はあまりよく思っていないからです。
才能とは
私自身の言葉で表現すると、種を落としたときに、その種が大きく健やかに育つ土壌をもっているかどうか ということかしらと思います。
ただ、土壌をもっていたとしても、雨風の影響を受け、育たない場合もありますし、それほど土壌がよくなくても、手入れをきちんとすることで、うまく育ち、すばらしい実がなる場合もあります。
土壌もよく、環境もよいけれど、手入れをしたくない場合もありますし、
土壌は悪いけれど、環境がよく、手入れもよい という場合もあるでしょう。
つまり、さまざまな要因により、育ち具合、育ち方が変わってくるということです。
私の生徒に見られた才能のかたち
私の教えていた生徒に関して、具体的に挙げると以下のようになります。
1.ヴァイオリンが大好き
彼女はヴァイオリンを弾くことがとても好きでした。それは、彼女自身も言葉にし、また、演奏する様子にもあふれだしているものでした。
2.ヴァイオリンへのアプローチが自然である
生徒のなかには、楽器を構えたり指を動かすだけでも必要以上にエネルギーを使うものもいます。まだ間もない場合は、とりあえず質はおいておくにしても、ヴァイオリンという楽器、そして弓を、あまり無理なく、わりに自然に扱うことができるということは、上を目指すうえでは大切です。
3.リズム感がある
私のであった生徒のなかで、とても残念ながらリズムを感じられる能力がとても弱い子供がいました。スキップをすることも難しく、手をたたくにしても反応がとてもおそくなってしまう。クラシック音楽ではそこまで複雑なリズムはでてきませんが、そのリズムをある程度感じることができ、そして、ヴァイオリンを通してあらわすことができる、のはひとつの能力だと思います。もちろん、訓練でよりよくすることも可能です。
4.積極的にアウトプットができる
私のレッスンでは、基本的に、生徒が演奏をし、それについて、ときに自己分析をしてもらい、その後、私の考える演奏のよかったところ、その根拠、そして、改善するべき点とその根拠、そして、それらに対する問題解決方法(=練習方法)の提示 というかたちをとるのですが、彼女は、私の与えるインプットを理解し、自宅で実験、練習を重ね、自分でどのくらいまで理解できたのか、自分のものにすることができたのか ということを 次のレッスン(ときにもう少し後になることもありましたが)でアウトプットして見せてくれていました。
5.1つの課題にかかる時間が短い(ひとつの曲を仕上げるまでの時間が短い)
以前にも少し触れましたが、大切なレパートリーになればなるほど、1度勉強しただけでは最終結論に到達することはできません。さまざまな演奏形態、たくさんの曲や練習曲に触れることにより、見えてくるものもあるため、生徒のレベルに応じて、そのときのゴールを定めます。彼女はできることが多かったため、仕上げのレベルも高く設定していましたが、それでも、割りに短時間で次の課題に移ることができていました。
6.ひとつの課題に対して、高いゴールで仕上げることができる
前出ですが、音程にしても、リズムにしても、音楽表現にしても、少しずつ自分のリミットをはずしていくように質を高めていくのですが、たとえば、音程が基本的には問題なくとれていれば、それをより楽器を鳴らすための音程としてとらえるように導いたり、曲のキャラクターによって、ヴァイオリンの特徴をいかして半音をより狭くとる など、少しゴールを高く設定して導くことができていました。
7.暗譜が苦にならない、自然に暗譜をすることができる
生徒によっては、暗譜をすることが苦手で、私が計画(スケジュール)を組み、発表会や試験までに暗譜をできるようにしますが、この生徒に限らず、いいものをもっている と思える生徒は、とても自然に暗譜をすることができ、その点が問題になることはありません。
8.コーディネーションの問題がない
生徒によっては、左手と右手のタイミングがあわない という問題を抱えるものもいますが、彼女の場合は、それがほとんどなく、もし出てきたとしても、私の提案するエクササイズ(練習方法)ですぐに解決することができていました。
9.左手にほどよい強さがあり、どの指でも均一な音をだすことができる
生徒によっては、3指や4指がほかの指に比べて極端に弱く、音色が変わってしまうケースもあります。ヴァイオリンの演奏は決して「力」「強さ」だけの問題ではないので、指をどのように使うのか ということをケースバイケースで見つけていきますし、エクササイズを通して、改善できることも多々ありますが、彼女の場合にはそのような心配をする必要がありませんでした。
10.音程や音色に関して、聞き分けられる耳をもっている
例えば、音程に関しては、最初は誰でも、標的の的の部分が大きいものです。それを訓練を重ねることで、だんだんと小さくしていき、ピンポイントに近いところまでもっていきます。また、ヴァイオリンでの音程は、ピアノのそれとは違いますし、曲のキャラクターや調性により、低くとったり、高くとったり、表現の一部として音程をコントロールしたりもするので、微妙な違いを聴きわけられる能力を育てる必要がありますが、彼女はその訓練にきちんとついてこられる能力がありました。
11.楽譜を読むことに対して、積極的になれる
私は最初の段階から、楽譜を読む ということをとても重要視します。演奏の準備はそこから始まるからです。どの生徒に対しても、音源を頼ることなく、まずは楽譜に何が書いているのかを理解し、音にする という作業をしてもらうのですが、私たちはゲーム感覚で、いろいろな楽譜に触れ、楽しみながら、楽譜を読む作業ができていました。(音楽表現の勉強の段階にくると、どんどんいろいろな音源を聴いてもらいます)そして、彼女はそのことについてもとてもオープンでした。
12.練習時間を確保し、結果を導き出す練習をすることができる
練習方法に関しては、レッスン中に伝えますが、彼女はそれを実践して、結果をもたらすという中身のある練習をすることができていました。学校が忙しくても、その作業をするための時間(練習時間)を確保し、努力を重ねていました。
13.楽譜の音符を弾くだけではなく、表現を加えることができる
私の生徒のひとりで、とてもいいヴァイオリン奏者がいます。速いパッセージも上手に弾くことができ、音程も割りに正確です。基本的には大きな問題はありません。けれども、フレーズを表現したり、音色を変えたりすることができません。というより、したくないのです。なぜなら「だって、そんなことをしたら、弾けなくなっちゃうもん」(笑)彼女に関していえば、このようなことはなく、表現することにも積極的でした。
14.緊張はするけれど、人前で演奏することが好きで、
機会があれば積極的に出て行くことができる。
聴衆と演奏をとおしてコミュニケーションをとるのも音楽の演奏のひとつの側面です。自分が学んだことを発表する機会に対して、積極的になれるのはよいことです。緊張は、私自身はある程度したほうがいいと考えています。そのような緊張感も演奏の一部だからです。過度にあがってしまい、手足が震えたりして、その緊張があまりにもはっきりと聴衆にも伝わってしまう場合には、対処が必要ですが。
15.音楽的なアイディアを自ら提案することができ、
そうすることを恥ずかしがらない。
私の指導方法はわりにシステマティックなので、情報が整理されながら、きちんと蓄積されていくケースが多いです。音楽的な表現に対してのアイディアは決してひとつではない場合が多いので、生徒によっては、ある程度のところまでくると、蓄積されてきたものをもとに、アイディアをだすことが可能になってきます。彼女の場合は、たぶん、いろいろな演奏も聴いて参考にしていたと思いますが、ときに、こう弾きたい というアイディアをもってきて、演奏を通してみせてくれていました。先生に意見されることを怖れずに、とりあえず自分が考えるところを提示できるのは、私はすばらしいことだと思います。
16.学びたいという気持ちが強く、いろいろな提案に対して、オープンであり
その提案を積極的に試してみることができる
私の提案に対して、いつもとても素直に積極的にとらえてくれていました。私自身もそうだったのですが、ときに、音楽表現において、先生のおっしゃることを充分に理解できるだけの器が育っておらず、その表現を充分に形にせず、躊躇してしまうことがありました。彼女は、きちんと理解できていないにしても、とりあえず、その表現をしてみることができていて、きっと、その後、それがなぜいい表現とされるのか、ということを理解してくれるときがくると感じられる印象を与えてくれました。
17.演奏中のアクシデントに対して、自然に対処することができる
演奏中になにか問題が起こっても、すぐに対処し、長くひきずらずに回復できる というのもひとつの能力です。
18.努力をすることができ、それに対して、そこまで苦痛に感じていない。
彼女は、ほかの生徒たちに比べて、前出のようなよい特性がありましたが、これは、努力の支えがあってこそ光り始めた部分もあると思います。一見、あまり努力をせずにさらりと弾いているようにみえますが、やはりそれなりの時間をかけ、練習という努力を重ねていました。練習は大変なときもありますが、努力をし、できるようになるよろこびを一緒に分かち合うことができていました。
19.ヴァイオリンを続けることができる
それを応援してくれる人が周囲にいる(引き寄せることができる)。
人生にはいろいろな節目があり、ときに、辞める という選択肢が浮かんでくることがあります。彼女はそれほど余裕のあるご家庭ではなかったですし、ご両親が生まれ育った国に帰るという決断をしたとき、まだとても若いながらも、節目 に遭遇しました。けれども、彼女の場合は、ご両親さまも、彼女の音楽、ヴァイオリンの能力がよく育っていることを感じていましたし、私自身も、そして、音楽学校のDirectorも、彼女がヴァイオリンを続けたほうがよい と考え、その旨をお伝えしたりしたものです。
20.感覚だけでなく、きちんとした論理も導入することができる
私は大学時代、学問として音楽に触れていたので、音楽を単に感覚的なものとは捉えていません。もちろん、感覚的、本能的にアプローチする部分もありますが、ヴァイオリンを通して音をだすのは、物理的に説明することもできますし、音楽的な表現に関しては、音楽分析により説明できる部分もあります。そのため、私はある年齢に到達した生徒たちとは、言葉を介して、論理的なアプローチもとります。彼女は、頭も使うことができ、感覚的な部分、論理的な部分、両方をよいバランスで学び、両方を使ってアウトプットができるようになっていたと思います。
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もう4年以上も前のことですが、彼女のことを思い出して、なるべく具体的な形になるように書いてみました。(もちろん、具体的になっていない部分もありますが (^^;)
とりとめもないリストになってしまいましたが、このように彼女には、ヴァイオリンを勉強するうえで、ヴァイオリンで音楽を演奏するうえで、利点となり得るものをたくさんもっており、何よりも、彼女からでてくる音楽がいつも生き生きとしていて、よいエネルギーをもって、あふれてくる 印象がありました。そして、それが、そのときだけではなく、継続され、よりよいかたちとなって、変化し続けていました。そのような様子が、私に「才能にあふれている」という言葉を使わせることになりました。
説明不足な点、わかりにくい点、重複に近い部分もあるかと思いますので、
また、ご質問、ご意見などありましたら、どんどんお寄せくださいね!
すばらしい質問をどうもありがとうございました!!
音楽の勉強は長い長い旅
私の生徒のひとりに、60代の女性がいらっしゃいます。
(写真はイメージです)
もう数年、不定期ではありますが、私のところにレッスンに来ています。
小さいころにヴァイオリンをしていたのですが、大きくなるにつれて ほかのことが忙しくなり、遠ざかっていったそう。
2年くらい前には、ASTA-CAP(アメリカ弦楽器指導者協会 Certified Advancement Program)の レベル7 に合格するなど、常に前向きにヴァイオリンに取り組んでいます。レッスンのたびに、私の叱咤激励を浴びて、楽しむ気持ちも忘れずに、常に成長しています。
試験に合格する前には、ベリオのヴァイオリン協奏曲9番も勉強して、ヴァイオリンの技術に関して、知識と経験を広げました。
そして、数日前にレッスンにきたときには、ヴィオッティ 協奏曲23番1楽章 Paul Klengel によるカデンツを弾きました。
彼女はピアノも弾くので、夏になると、ヴァイオリン奏者として、もしくはピアノ奏者として、大人のための室内楽キャンプ なるものに毎年参加しています。
ここ数年は、ヴァイオリン奏者として そのプログラムに参加していたので、今年はピアノで参加するとのことで、ベートーベンのピアノトリオなどを勉強する予定だそうです。その準備もあり、ピアノのレッスンに忙しい と言っていたので、ヴァイオリンのレッスンにどれくらいの準備ができるのかしら?と私はあまり期待を抱かずにいました。
が、彼女のもとからでてきたのは、しっかりとした「音楽」で
私をとても驚かせてくれました。
カデンツァは演奏者の技術面をも充分に発揮できるように書かれてあることが多いため、彼女にとっては、とても難しいのですが、各セクションにおいて大切にしなければならないこと、全体の流れなどもとても明確で、音程は不安定なところがありましたが、メロディーとなる大切なところでは音程も安定していたため、聴いている人を不快にさせたり、聴いている人がたどっている音楽の流れを決して邪魔することなく、最後まですばらしく音楽を運んでくれました。
もちろん、まだまだ稚拙な部分はあるのですが、前回のレッスンで、セクションごとに練習方法を伝え、目標とするべきことを伝えたところ、それをしっかり理解し、こなしてくれて、今の段階では充分よくできている と私が太鼓判を押せるものでした。また、でてくるものがとても素直で率直で、私はその演奏に感動しました。彼女があの瞬間にだせるものすべてがしっかりでてきていました。
ふと、録音をしてあげればよかったかもしれない、とも思いましたが、この感動は、私のこころのなかにずっとずっと残るでしょう。
弾き終えた後に、私が拍手をしながら、とてもよかったですよ!と伝えると
「一生懸命、練習したの!」と話してくれました。
いくつか補足したいことがあるけれど、これは今日で終わりにしましょうね。と伝えると少しびっくりしたような顔をしていました。
もう何年も何年も前のこと。私自身もとにかく先生のおっしゃることを一生懸命すべてがんばって毎回レッスンに臨んでいたときのことを思い出しました。先生がとりあえずこの曲は終わりにしましょう とおっしゃっても 私は自分の演奏に納得がいかず、なんとなくイライラしていて、なんでもう次なのかしら?よく感じていました。ときには、先生が「とてもいいですよ」とおっしゃってくださっているのに「そんなことない!!」なんて先生に言ってしまったこともあり、どれだけ先生に失礼をしたか、先生のおこころを傷つけてしまったかも、と後から後悔したりもしました。(笑)
今は生徒である彼女の気持ちも、あのときの先生が考えてらしたことも、とてもよくわかります。
音楽の勉強は長い長い旅です。
1度勉強して、それで終わりということは決してありません。
同じ作曲家のほかの作品を勉強したり、他の作曲家の作品を勉強したり、協奏曲だけでなく、室内楽、オーケストラ、無伴奏、さまざまな形態の音楽を勉強するからこそみえてくるものがあるので、いろいろな作品にふれる必要があるのです。(また、文献に触れたり、他の演奏家の演奏を参考にすることも助けになります。)
だから、生徒のみなさんは、先生によかった と言っていただけたら、大いに喜んで、次のステップに進みましょう。
音楽の世界はとてつもなく広いのですから。
そして、彼女のように60代でも上手になっていっている人がいるということをどうぞ知ってくださいね。
カイザー22番 / Kayser 36 studies for violin no.22 Allegro assai (Svecenski)
♪ ♪ ♪ ♪
「弾きはじめたばかりだけれど、止めるわね。2小節目は最初の音をなんとなく、長~く伸ばして弾いてくれましたね。自分なりに考えて、そして、考えたことをかたちにして分かち合ってくれてありがとう。そういう姿勢はとっても大切。けれども、楽譜の読み方としては、正しくないわ。
まず、ト音記号があって、ヴァイオリンで弾ける ということを確認。そして、シャープが4つあって、コモンタイム (日本語でもこのように言うのですね!びっくりしました!!)、つまり4分の4拍子ということもしっかり確認します。そのあとにはじめて音がかかれてあるのですよ。1小節目には16分音符が連なっていて、拍子を書き入れると以下のようになりますね。
では問題の2小節目。最後の4つの16分音符はきちんと書かれています。ではこの小節に拍子のラインを書き入れるとどうなると思う?」
「最後の拍子はここになるけれど、他の部分が・・・・・???」
「最後のビート(拍子)はあっているわ。ということは残りの部分で3拍ということになるわね。つまり、以下のようになの。
そして、付点2分音符のようにみえる音の下の旗の部分が16分音符と同じようになっているのがわかるかしら?つまり、付点2分音符の長さ分を16分音符で弾いてください、ということなの。もし、1音1音ずつ書くとすると、以下のようになるわ。
そして、もうお気づきのとおり、ほかの小節にも同じことが言えるので、この曲のほとんどの部分は16分音符で弾くことになるわね。
この曲は指を正確に動かす訓練であるとともに、ひと弓でたくさんの音を弾く弓のコントロールの練習、音程の練習でもあります。もちろん、練習方法としては、まず、音程をしっかり理解してから ひとつひとつの音の粒をそろえて、指を動かすことに気持ちを向けるのがいいかと思います。大抵の場合、この練習曲を弾くころには、音の粒は自然にそろう生徒が多いので、あなたもそちらにはそれほどエネルギーを使わなくても大丈夫だと思いますよ。
音程の練習にはすべての音を弾くのではなく、以下の○で囲んだ部分のみを弾く感じで音をとっていくのがいいですね。
このようなかたちでまず全体を把握して、その後すべてを16分音符で弾くことに慣れ、最後にテンポを上げて、どのテンポでも無理なく、粒をそろえて弾けるようにするのがいいですね。もし余裕があれば、もちろん強弱もつけるのが良いですが、カイザーで長い時間を費やしすぎないで、前に進むこともとても大切です。様子を見ながら進めていきましょう。
今、あなたは中学生。学校にも行かなければならないし、宿題もしなければならない。ごはんも食べないといけないし、お風呂にも入って、睡眠もとらないといけない。他の活動や習い事もあるでしょうから、そんなにたくさんたくさんの時間をヴァイオリンだけに費やせるわけではないですもの。(笑)効率よく、でも学べるものをしっかり学んで進みましょう。
また、以前にもお話ししたとおり、練習曲・エチュードはすばらしい作品を演奏するための準備をするためのものですし、エチュードだけでも、まだまだ何冊もこなさないといけません。カイザーは、Elementary and Progressive Studies という名の通り、まだまだ初歩の段階ですから。長い、大きなスパンも見据えていきましょうね。」
先生、お元気ですか?
数日前に、約4年ほど前、ご家族がアメリカから韓国に移住を決め、私のもとを巣立っていった韓国人の女子生徒がメールをくれました。
4年前に引越しをしたばかりの頃のメールには「先生がそばにいなくてさびしい。でも、先生に会えて本当によかった」と書いてくれていました。
その彼女も大学に入る年齢。韓国芸術総合学校に合格しました!と連絡をくれたのです。試験では メンデルスゾーン協奏曲(全楽章)、バッハ 無伴奏パルティータ3番(全楽章)、パガニーニ カプリス 14番と20番 を弾いた とありました。
私が彼女と会った頃、エチュードやスケールにあまり触れていなかった彼女に、私がそれらを導入し、どのように練習をするのか、なども伝えながら、音楽性と技術の両方において、大きな協奏曲を弾く前の段階の大切な数年間を一緒に過ごしました。
その頃から才能にあふれている感じがあったので、これは大切に育てなければ、と身の引き締まる思いで、とても真剣に、そして、楽しく、レッスンを重ねていたのをよく覚えています。その間に、ベリオの9番をオーケストラと演奏したり、ヴィヴァルディの四季より春 でバロックのカテゴリーで2位に入ったり、そのほかにも小さなコンクールで常に上位に入りながら、一生懸命がんばっていました。
フルサイズのヴァイオリンを使いはじめてまもなく、ご家族での引越しが決まり、私のもとを巣立っていきました。韓国に移住後、音楽の学校に入るための試験では私と最後に勉強したヴィターリのシャコンヌなどを弾き、無事に合格。彼女の音楽的なお引越しも無事に済んでいました。
メールには彼女の写真も添付されていていました。
本当に美しくなって、きらきらしています。
これからが本当に楽しみです。
愛をこめて、私も彼女にお返事を送ったところです。
カイザー 30番 / Kayser 36 studies for violin no.30 Allegro moderato (Svecenski)
「あなたの試験のエチュードの課題は。。。?」
「カイザーの30番です。これ音がいっぱいあって楽しい!」
「あら、そう! それはよかったわ。 手が疲れたりしない?」
「う~ん。。。大丈夫!」
「ではちょっと聴かせてくれる?」
♪ ♪ ♪ ♪
「途中で止めてごめんなさいね。だけど、問題があるわね。何が問題なのかわかる?」
「???」
「まず、音程。西洋音楽は全音と半音から成っているの。だから、全音と半音のふたつが、いつどこでどのように使われているのかを 聞いている人がはっきりとわかるように演奏しなければならないわ。あなたの演奏では、半音の間隔が少し大きいことがあって、半音と全音がはっきりしないことがあるので、聴いている人にはわかりにくいと思うわ。半音では左指をしっかり指をくっつけて、隣同士に置いて、全音ではしっかり離す。しっかりやってみましょうね。
それから、指は動いているけれども、残念ながら、粒がそろっていないの。自分で聴こえるかしら? ときどき、3つめの音が長くなったりしているの。 わかる?
そのようになる原因は、あなたがひとつひとつの音を正確に感じられていないから。
この30番はたくさんの音が書かれてあるけれども、まず自分がひとつひとつの音を意識し、しっかり聴きながら 弾かなければならないわ。ひとつただなんとなく指を動かしているだけではダメなの。
あなたのために提案できる最初のステップは、スラーをとって、ひとつひとつの音を弓を替えて弾いてみること。
あなたは、集中力に欠けるところもあるし(笑)、身体の使い方がまだ固いので、もし、両手ともに(もしくはどちらかが)疲れるようだったら、まずは1ページ目に集中しましょう。もしくは、1ページを半分、もしくは3分の1、もしくは4分の1など、短いセクションに区切って、セクションごとによくしていくというかたちで練習をするのもいいかもしれないわね。
この練習の方法だと、左手、右手のタイミングがあわないなどの問題もでてくる可能性があるので、自分できちんと弾けていると思えるテンポでまずやってみること。速く弾く必要はないの。この練習の目的は、ひとつひとつの音に意識を向けること ですからね。
もう一度繰り返すけれど、この作業をしながらも、音程のことを考えることも忘れないようにね。
それから、39小節目から43小節目は移弦や音程の問題もあるので、そこは今から練習をはじめておきましょう。先週一緒にみてあるから大丈夫ね?
次のレッスンのときまでに、どのような成果を聴かせてくれるのか楽しみにしているわね。」
**************
この2週間は、大きな状況の変化(ステイホームオーダー)に落ち着いて練習に向き合えなかったかもしれないけれど、上に楽譜をあげてある部分の音程がまだ不安定ね。
先生の音程ももっとよいほうがいいけれど、参考にはなると思うので、これを参考につかってみてね。
**この記事は生徒の様子によって、再度追記更新をするかもしれません。(^^)
ピックアップ(=弱起・アウフタクト)って何?: ダンクラ エア・ヴァリエ6番のレッスンにて ”What is the pick up?” at the lesson of Dancla Air Varie no.6
「あなたはこの間、オーディションを終えたばかりだから、今日は2ヵ月後の試験に向けての課題に初見で少し触れてみましょう。試験には初見も含まれているので、いい練習だと思ってやってみて。ダンクラ エア・ヴァリエ6番よ。」
♪ ♪ ♪
「途中で止めてごめんなさいね。最初の音、Aの音だけれど、その音は、ダウンボウで弾きましたか?それともアップボウで?」
「ダウンボウで弾きました。」
「そう。あなたはそう弾いたわね。けれども実は、その音はアップボウで弾くのが一般的なの。なぜかわかる?」
「。。。。。。???」
「ピックアップ/ pick up だからよ。
ピックアップとは日本語では「弱起」ドイツ語では「アウフタクト」というの。
ではピックアップ/pick upとは何でしょう? 言葉は聞いたことがあるかしら?」
「う~ん。。。。。。???」
「ピックアップ/pick up というのは、ひとつの音だったり、いくつかの音の連なりだったり、もしくはモティーフだったりもするのだけれど、次の小節の最初の拍(ダウンビート・強拍)にむかって続いていく感じをもつフレーズの一部分のことを言うの。
そして、ダウンビートに向かっていくという役割があることから、アップボウで演奏することが多いわ。大切なビート(強拍・strong beat)は重力に助けてもらえるダウンボウである程度重みを感じて弾きたいからね。だからこの場合の最初のAはピックアップだからアップボウではじめるのよ。」
なんとなくピックアップという言葉のニュアンスがわかったところで、このダンクラ エア・ヴァリエの主題の部分から、ほかにもピックアップ/pick upがあるかどうか探してみてくれる? ヒントは最初の部分以外にあと4つあるわ。そこにアップボウを書きいれてみましょう。」 」
「あ!わかった!!」
「そう。その通りね!」
「ピックアップ/pick upが何なのか、なんとなくわかったところで、ほかのエア・ヴァリエもみてみましょうか?
今度は、ダンクラ エア・ヴァリエ5番の主題からピックアップを探してみましょう。
またピックアップをみつけて、アップボウを記してみてね。
答えは…
この場合は、先ほどと違って、ふたつの音がピックアップになっていますね。
そして、また別のタイプのピックアップとして、ダンクラ エア・ヴァリエ2番を見てみましょう。この場合は、6つの音がピックアップになっていますね。
少しピックアップということがわかってきたかしら?
これからもいろいろなピックアップに出会うと思うので、注意を向けてみましょうね。」