Dear violin Students 私の大切な生徒たちへ

ヴァイオリンを学ぶ方々と分かち合いたいたくさんのこと

受け継がれるもの


Rondo for Violin and Orchestra in C major, K. 373 - Nathan Milstein

 

最近、モーツアルトがとても気になっていて

過去に勉強した曲にまた触れてみたいと考えています。

ふと、なんとな~く、検索をかけてみると

今日、Youtubeで私の先生の先生の演奏がでてきました。

ミルシュタイン先生の動きや手の使い方が、私の先生と似ていることに気づいて

先生が先生のことを尊敬されているからこそ、そうなるのだな…と

つい微笑んでしまいました。

 


1. Music for The Fingerboard - Josef Gingold - Interview & Recordings

 

私がお世話になっていたオーケストラのコンサートマスターも

実はスゴイ方で、何度か指導を受けたことがありますが

彼はギンゴールド先生に師事をされていて

ギンゴールド先生のように話し、なんだか声も似ていました。(^^)

 

けれども

 

私の演奏を聴いた方が、私の演奏は、私の先生のものとは違うね、なんで?

なんてたずねてくださったことがありました。(笑)

私はもちろん、私の先生をそれはそれは!!!!尊敬していますが、

私は一度たりとして先生のように弾くようにといわれたことは一度もないからです。

自分の演奏は自分の責任。

自分の表現をみつけなさい。

ある意味、とても厳しいお言葉です。

いろいろな表現、いろいろなヴァイオリンへのアプローチの方法を試して

でも、結局は、先生の近くに戻っていくのかもしれません。

どうなるかは、誰にもわかりません。

でも、だからすばらしいのだと思います。

 

そういえば!ハイフェッツに師事してらした

クレア先生やシェリー先生にお世話になったこともありました。

みなさんどうしてらっしゃるのかしら、お元気かしらとふと思い出した今日でした。

 

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ヴァイオリン奏者の腱鞘炎(左手)治癒過程 その2

2019年11月20日頃に発症した腱鞘炎の治癒経過です。

2019年12月24日の施術後、2020年2月18日にカイロプラクティックの予約を入れてあったので、いってきました。(1月は残念ながら日本に行っていたりもして、うかがえませんでした。)

状態は悪くない でも、治らない。そんな感じです。

自分自身でも痛みはだいぶとれてきているのがわかりますが、残念ながら無痛ではありません腫れはもうないと自分では思います。

先月(1月)の第三週目くらいに、はじめてヴァイオリンを弾いて、まだまだ痛む…という感じだったので、その後もまだまだずっと  Futuro の 手首と親指用サポーター を常に使い続けています

2月のはじめくらいからでしょうか、自分の練習時間も本当に少しずつとるようにして、2月13日くらいから、1日に1時間くらいはヴァイオリンを弾けるようになりました。その日により、ヴァイオリンを弾いている最中にヘンな痛みがあったりなかったり。ヴァイオリンを弾いた後には痛みを感じることのほうがまだ多いです。とくに、ものすごい高音になると手首が痛むので、あまり上にはいかないようにしています。

ヴァイオリンを弾いたあとには、手首から親指にかけて走る腱周辺を伸ばすようにマッサージをして、必ずアイシングをしています。

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daiso hot and cold beads pack

アメリカにもダイソーがあって、Hot & Cold Gel Beads Pack というものが売っていたので、アイシングにはこちらを使っています。ケーキ屋さんなどでいただく保冷剤を使用していたのですが、ときどき、固すぎて痛みを感じることもあったからです。(^^;  こちらのビーズパックは冷やしてもカチカチ!!にはならないので、その問題からは開放されました! ちなみに裏面はちょっともふもふしたフリースのような生地で覆われています。

また、上半身(腕、胸、肩など)のストレッチも積極的にするようにしています。

日本で購入した ロキソニンS ジェルタイプ は夜眠る前に、なるべく使用するようにしています。(なんとなく軽く効いているような感じがあるので。)痛み止めとしては使いたくないのですが、炎症を抑える効果もあるようなので、そちらの効果をぜひ感じたく、期待をしています。(笑)^人^ 

2月18日のカイロの施術のときには、やはり腱鞘炎のある左手首は少しずれていて(たぶん使いすぎのせいで ゆるくなっているそうです。)それを調整していただき、イヤな感じの痛みは軽減されました

来月の施術の際には、手首をちょっと鍛えるトレーニングなどを指導していただけたらと思っています。それまでに、もっと痛みがとれるといいな、という感じです。

 

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ヴァイオリン弦特定表 / Violin Strings ID chart

「先生、弦を替えようと思うのだけれど、自分の弦がどのブランドなのかわからなくなっちゃった。。。この弦は、前の先生がすすめてくれたものなのだけれど、パッケージは捨ててしまったし、弦の名前は全然覚えていません。。。 どの弦なのだろう??」

 

弦のブランド名は、弦の巻きによって特定することができるわ。

巻きはペグボックス(糸巻き)側とテイルピース側、両方を参照するの。

私が見た限り、ドミナント(トマスティーク)やピラストロのものではないわね。

先生が見たことないものだから。

実はね、インターネット上に、とても便利なチャートがあるの:

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string ID chart

このチャートは、アメリカはメリーランド州の Lashkof Violins が掲げているもの。

以下にリンクを貼っておくので、詳しくは参照してみてくださいね。

Thank you, Lashkof Violins !

 

www.lashofviolins.com

 

レッスンではうまく弾けないんです…

「レッスンにくると、家で練習しているときほどうまく弾けないんです…」

(大人のはじめてさん)

 

「まず、気持ちをお話しくださって、ありがとうございます。

これは、あなただけではなく、他の生徒たちもときに口にしていたことです。

そして、私自身もそう感じて、ときにイライラしてしまっていた時期もありました。

まず、多くの人がそう感じるのだということ、そして、私の生徒たちの口からも よく聞くコメントのひとつであるということを知ってくださいね。

 

自宅では、自分の好きな時間に、自分の好きな格好で、与えられた時間だけ好きなだけ練習をし、練習の終わりの頃になると、成果が感じられ、満足感も得られるのかもしれませんね。

けれども、私たちは、こうして、外に出かけて、自分の体調が良いときでも、悪いときでも、演奏をしたいと思うときででも、そうでないときでも、弾かなければならないときに、自分のレベルをある程度保って演奏できなければなりません。

だからこそ、こうしてレッスンに来て、演奏をするんです。

ヴァイオリンを持って、外に出て、移動をして、レッスンに来て演奏をするということは、もうすでに本番のための準備となっているんです。

ある意味、その作業をしていなかったら、本番を迎えることは難しいかもしれません。

お仕事が終わってからレッスンに来る、お子さんが体調を崩し、看病で眠れなかった翌日にレッスンに来る、ご自身が体調を崩してしまって、練習ができなかった と不安に思いながらレッスンに来る、大人の方々はみなさんいろいろです。

そのようなことを重ねて、レッスンを続けていくうちに、ヴァイオリンも少しずつ上手になりますし、音楽性も磨かれて、そのうえに、人前で演奏する、ということも学んでいきます。

残念ながら、近道はありません。

私も、本当に何度も何度も自分で自分にイライラしたり、怒りを感じたり、落ち込んだり、恥ずかしい思いをしたり… 練習をしてもしても、上手になっていないような気がしていた時期もありました。心身の健康を損ねたこともありました。

でも、だからこそ、みなさんと分かち合えることが多いのだと思っていますし、私の生徒には、私よりもずっと効率的に安全に歩んでもらいたいので、私の知っていることは、すべてお教えしますし、お伝えするようにしています。そして、できれば、その分、私を超えて欲しいとも思っています。

私自身も今でも、少しですが、学びを続けていますので、そのような研究も加えて、与えられることをより増やしていけることを望んでいます。

例えば、1年後のあなたは、もう今日のようには弾けないはずです。なぜなら、1年という月日をかけて、練習をし、レッスンを受け、上手になってしまうのですからです。今日という日はもう帰ってこないのです。

ですから、今ご自身がいる場所をしっかり味わい、かみしめ、楽しみながら、そして苦しみながら(笑)、前へ進みましょう。

少しずつ、でも絶対に、手ごたえを感じられる日はやってきます。

一緒にがんばりましょう!

 

 

 

 

音楽における英語の表記:音名と調

「英語で長調、短調と書く時は、長調は大文字で、短調は小文字で(例えばG Majorとg minor)書くのが一般的なルールなんですか?」

ブログを読んでくださった方が、上のようなとてもよい質問をくださいました。

ありがとうございます! 今日はこちらについて書いてみようと思います。

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英語、そして、各国の音名表記 

まず、英語において、音名は、

 

C D E F G A B 

 

イタリアやフランスでは:

 

 Do・Re・Mi・Fa・Sol(So)・La・Ti(Si)

 

日本では小学校でも音楽の授業のときにある程度ソルフェージュに親しみますし、音楽用語にイタリア語が多いことからも、音楽におけるイタリアの影響はとても大きいので、日本語では上記が日本語の発音にアレンジされ、いるのかしら、と思っています。

日本語では: 

ど れ み ふぁそ ら し 

 

日本音名は:

ハ ニ ホ へ ト イ ロ 

 

ドイツ語では:

C     D  E  F  G  A  H
ツェー  デー エー エフ ゲー アー ハー

 私は普段、英語をよく使っているので、子供たちを教えるときに

「アルファベットと同じよ。A, B, C, D, E, F, G…次は…」

というと、頻繁に元気よく

「H ! 」

と答えてくれるので

「残念!音楽にはHはなくて、またAに戻るのよ」と導きます。(^^)

 

英語における調の表記

そして、調に関しては

長調が Major

短調が minor

となります。

 

どのように表記しても間違いではない

上記で、大文字、小文字を使い分けていますが、どのように表記しても間違いではありません。

例えばCDの場合

例えば、CDにおける表記をみてみると:

Rachel Podger Bach Complete Sonatas and Partitas for Violin Solo の場合

Partita nr.3 in E major

Sonata nr.2 in A minor

となっています。

Frank Peter Zimmermann Prokofiev Complete Violin Works の場合

Violinkonzert Nr.1 D-dur

Violinkonzert Nr.2 g-moll

となっています。

上記の方々はイギリスの方、ドイツの方なので、アメリカの演奏家といえば... 

Hilarly Hahn Plays Bach の場合

SONATA NO.1 in G MINOR

PARTITA NO.1 IN B MINOR

けれども、上記すべて、アメリカのレコード会社ではないので…

アメリカのソニークラシカルを検索してみると

Jascha Heifetz Plays Great Violiln Concerttos の場合

Beethove Violin Concerto in D major 

Bruch Violin Concerto in G minor

となっています。

CDの場合はカヴァーデザインが優先されるかとも思うので、次に教材をみてみましょう。

 

学生用教材の場合

アメリカでとても一般的な、私も使っている学生用教材、Solos for Young Violinists という曲集をみてみると

Viotti Concerto No.23 in G major

Beriot Concerto No.9 in A Minor

Haydn Concerto No.2 in G Major

などと、びっくりするくらい(笑)不統一です。

 

手元の古い版になりますが、Suzuki Book 5 violin part をみてみると

Vivaldi Concerto in G Minor

Veracini Gigue from Sonata in D Minor

となっています。

 

このようにどのように表記しても間違いではありません。

 

明らかにわかりやすいのはどちら?

けれども、こちらを比べてみてください:

A Major / A Minor

A Major / A minor

A Major / a minor

慣れもあるかもしれませんが、すぐにわかるのは私自身は3番目だと思います。

楽譜を読むときも、例えば、サイトリーディング(初見演奏)をする際も、音のグループの仕方で、読みやすかったり、読みにくかったりもします。

それと同じように、長調、単調の表記も わかりやすくはっきりと ということで、長調に大文字を使い、単調に小文字を使う のが良いと考えています。

その考え方がどこから来ているかというと…

 

なぜわかりやすくはっきりとさせる必要があるのか?

ハーモニーを勉強する際に

英語でハーモニー(和声)を勉強する際に、長三和音(Major triads)は大文字のローマ数字  短三和音(minor triads)は小文字のローマ数字 で表記する、と学ぶので、その影響で、大文字・小文字を使い分ける という表記が広まっているともいえるように思います。この場合は、やはり、違いを明らかにするために、という目的だと思います。

例えば、以下は C Major (ハ長調)のスケールのうえに、3度の関係で和音を構成したものです。

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C Major triads

なんだかちょっと難しい言葉が並んで、びっくりするかもしれませんが、注目していただきたいのは、ローマ数字です。Majorの和音のときには大文字(I, IV, V) そして、minorの和音のときには、小文字(ii, iii, vi, vii) を使います。 

 

また、Fundamentals of Piano Theory by Keith Snell & Martha Ashleigh という若い方々が音楽理論を勉強するのに、よく使われる教材がありますが、こちらの Level Four の29ページに以下のような表記がでてきます:

"Triads of Major Scales

A triad may be built on each degree of the Major scale.

Each triad is labeled with a Roman numeral.

Major = upper case Roman numeral

minor = lower case Roman numeral

diminished = lower case Roman numeral and ° " 

 

注目していただきたいのは、太字にした部分、長三和音(Major triads)は大文字のローマ数字  短三和音(minor triads)は小文字のローマ数字 で表す。となっています。

つまり、英語でハーモニー(和声)を勉強する際に、違いを明確に記すためこのようなルールを学ぶので、長調を表すときには大文字で、短調を表すときには小文字で、例えば、イ長調を A Major、イ短調を a minor という表記も広まっているのだと思います。

音楽の表現そのものもそうですが、クリアに、わかりやすく というのは、人とコミュニケーションをとるうえで、大切ですものね。

 

すばらしい質問をありがとうございました!

私なりの回答なので、充分でないところもあrかもしれませんが、またみなさまからいろいろなご質問をいただき、一緒に考える機会があればと思います。

 

 

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ヴァイオリン協奏曲の難易度:私がたどった勉強の道のり

練習曲・エチュードに関しては、過去に少し触れたので、今日は、ヴァイオリン協奏曲について私の経験をお話ししましょう。

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なぜヴァイオリン協奏曲を学ぶのか?

ヴァイオリンを学ぶものは、小さな頃からヴァイオリン協奏曲をたくさん勉強しますね。それは、「ヴァイオリンのために書かれている」協奏曲 を通して、音楽性を養うとともに、ある程度効率よく、ヴァイオリンのテクニックを学ぶことができるからです。

 

室内楽は、ほかの音楽家たちとのコミュニケーションや、アンサンブル能力、そして、音楽性を育てることに有効です。室内楽は、2人から10人くらいまでとかたちはさまざまですが、ひとりの奏者に対して、ひとつのパートが与えられています。ふたりでしたら 1/2 、トリオでしたら1/3、カルテットでしたら1/4と、ひとりに与えられる割合は演奏家の人数によって分散されるにしても(ピアニストは、右手と左手の2人分かもしれませんけれど(笑))、オーケストラで演奏する場合よりも、ひとりに対しての責任の比重がずっと大きくなりますね。(もちろん、そんな風に簡単に割り切れるものでもありませんが(笑))ある程度、個性を発揮することもできますし、指揮者なしで、ほかの演奏家といろいろなことを分かち合い、考え、演奏できるのは大きな喜びです。

 

オーケストラにおいては、正確性がとても大切になります。より多くの人間が関わっているからですね。室内楽のところで述べたことを考えると、ひとりへの責任の割合は小さくなります。ヴァイオリンの場合は、同じパートを14人から16人くらいで(曲などによって多少変化します)弾くからです。ある意味、必ず誰かが助けてくれる ともいえますし、ひとりでがんばりすぎず、ひとりで力みすぎず、周囲から聴こえてくる音に細心の注意を払い、周囲にしっかりと溶け込む音色を選び、正確なリズム、音程、アティキュレーションなどを楽譜から再現します。tuttiは、指揮者にも、プリンシパルにも注意を向けていないといけないので、常に細心の注意が必要です。けれども、壮大な音・壮大な音楽を大きなシンフォニーホールで再現できるのは、オーケストラならではのこと。いろいろな楽器の音色もそれぞれユニークですし、指揮者やプリンシパル、周囲の演奏家たちから、いろいろ学ぶこともできます。室内楽とはまた別の喜びです。

 

できることならば、早い段階から、このように 協奏曲などのソロ、室内楽、オーケストラ の 3つの柱に触れる機会をもつことが大切です。

 

ヴァイオリン協奏曲の難易度といっても…

さて、タイトルで「ヴァイオリン協奏曲の難易度」という言葉を使っていますが、この難易度 という言葉はとてもやっかいです。協奏曲に限らずですが、いってみれば、ある意味どれも難しいからです。(笑) 私たちは、作曲家が亡くなったあと、250年以上経っても弾き続けられるようなすばらしい作品の数々を勉強しています。それぞれの作曲家にユニークな言語があり、スタイルがあり、それは、同じ作曲家の作品をいくつも勉強したり、また、他の作曲家たちの作品にも触れることで、体感し、理解できるようになってくるものです。

例えば、私たちがヴァイオリンをはじめてまもなくヴィヴァルディやバッハはバロック時代に書かれており、ご存知の通り、当時は今、私たちが使っているモダン楽器とは少し違うタイプのヴァイオリンや弓が使われていました。しっかり勉強しようと思ったら、その当時の楽器のこと、そして、それでできたこと、できなかったこと、より深い楽譜の読み方なども勉強しなければなりません。

そして、モーツアルト! 彼の作品はとてもユニークなスタイルで、洗練された独特の音楽表現を必要としますので、すべてのヴァイオリン奏者が得意とできるものではないような気がします。

なんだかずいぶん脅かしてしまったかもしれません.。(笑)けれども、みなさんは、子供たちが演奏するヴィヴァルディやバッハ、そしてモーツアルトがどれだけ美しいかご存知ですか? まだそれほど経験のない彼らは、ただただ指を動かし、弓を動かし、彼らにできるだけの精一杯をするのですが、純粋に書かれたものを追うだけでも、それはそれでとても美しいものですし、ときに人のこころを打つものです。だって、すでに作品そのものがすばらしいのですから。(笑)

なので、私たちは、常に、未知の世界に対しての好奇心を忘れずに、きちんと弾くことは難しいだろうということをなんとなく感じながら、それは一体どういうことなのか?ということを考え続ながら、将来、その難しさの本当の意味をきちんと理解し、それを理解したうえで、自分にできることを探せるように、そして、それすら克服できるところにいけるかもしれないという期待を胸に、決して足を止めないようにしなければなりません。

大人の方々は、決して諦めずに楽しみながら訓練を続けましょう。以前、サイトウ・キネン・オーケストラでもご活躍されていたすばらしいヴァイオリン奏者に指導を受けたことがありますが、そのときに、先生は、パガニーニみたいな難しいことなんてできなくてもいいのよ なんて学生の私に言ってもいいのかしら? と感じさせるようなことをすずしい顔をして、平気でおっしゃいました。今となってはその言葉の意味がとてもよくわかります。

 

以下、私が教えるときに使う協奏曲の数々、そして、自分自身が勉強したもの を順番にリストしていきますね。そして、機会をみて、小品(私の言う小品とは、本当に短いものから10-15分くらいの長さのものを指します。協奏曲のひとつの楽章くらいのボリュームと考えてもいいかもしれません。)にも触れられればと思います。

 

1、私が生徒たちと勉強するもの

Seitz concerto no. 5, 2

Vivaldi concerto in a minor

Vivaldi concerto in g minor

Bach concerto for two violins

Rieding concerto in G Major

Seitz concerto in g minor op.12

Accolay concerto in a minor

Haydn concerto no.2 in G Major

Viotti concerto no. 23 in G Major

Beriot concerto no. 9 in a minor

Viotti concerto no. 22

(Mozart Adelaide concerto)

 

2.上記に続き、私が若いころに、何も知らずにとりあえず触れたもの

Bach concerto in a minor

Bach concerto in E Major

Mozart Adelaide concerto

Mozart concerto no. 5, 4, 3

Bruch concerto in g minor

Mendelssohn concerto in e minor

Beethoven concerto 

 

3、私がある程度きちんと勉強したもの

Mozart concerto no. 4

Bruch concerto in g minor

Lalo Symphonie espagnole (1, 4, 5)

Mendelssohn concerto in e minor

Saint-Saens concerto in b minor

Kabalevsky concerto in C Major

Wieniawski concerto in d minor

Barber concerto

Sibelius concerto

Haydn concerto in G Major

Vieuxtemps concerto no. 5

Mozart concerto no.3 in G Major

Glaznov concerto

Vivaldi Spring from Four Seasons

Conus concerto

Mozart concerto no. 5

Vieuxtmps concerto no. 4

Prokofiev concerto no. 1 in D Major

Brahms concerto

Beethoven concerto

Stravinsky concerto (終えられず ^^;)

Bartok concerto no.2 (終えられず ^^;)

Berg violin concerto (終えられず ^^;)

Vivaldi Four Seasons

 

(Nardini concerto)

(Dvorak concerto)

(Tchaikovsky concerto)

(Prokorive concerto no.2 in g minor)

(Khachaturian concerto)

(Mendelssohn concerto in d minor)

(Haydn concerto in C Major)

 

以上の並び、なんとなくお分かりになるかもしれませんが、基本的には、バロック、古典派、ロマン派、20世紀(現代)のカテゴリーのなかを行ったりきたりしています。ある程度のところにきたら、ロマン派の作品ばかりを学ぶのではなく、いろいろな時代のものに触れて必要がありますね。

 

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ヴァイオリン奏者と身体の不調:歯科 (ヴァイオリンとくいしばり)

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ヴァイオリン奏者と歯科?

一瞬ピンとこない関係のように感じられるかもしれません。

けれども、私の周りには、顎関節症にお悩みの方もありましたし、マウスピースを使用している方々もあります。

私自身のお話をすると、歯科検診を受けた際に、一度、先生のほうから、歯の表面がなめらか過ぎる そして、その理由は、たぶん、くいしばり、と教えていただいたことがあります。

その際に、うすいものなので、すぐに破れてしまうとは思うけれど使ってみて、と、マウスピースをくださったのですが、未使用です。(^^;

若い頃、あご当てがあごにすれることでできる あざ に憧れて、ヴァイオリンにあごを押し付けて、わざと あざ をつくっては、それを 練習の証 と 誇りに感じていたこともありました。(笑)

でも、とくに難しいテクニックを要する曲は、くいしばりから、筋肉を緊張させるような、余分な力みがあっては弾けるわけもなく、そのうえ、音もかたくなり、よいことは何もない ということに気づいてから、楽器にアゴを押し付けることからは卒業しました。

ヴァイオリン奏者のなかには、ヴァイオリンの練習に多くの時間を費やしただけが理由ではないかもしれませんが、顔がゆがんでいる(=左右のアゴの大きさや曲線の度合いが違う)方もおられます。それは、身体全体のゆがみにも関係してきます。

若いときには、支障はないかもしれませんが、年齢を経ると問題がでてくる可能性もなきにしもあらず です。

マウスピースはくいしばりを防ぎ(つけて演奏することで、最初のうちはとくに、そこに意識がいき、くいしばりを防ぐ効果があるかもしれませんね。居心地は悪いかもしれないけれど。(笑))、歯と歯の間に隙間を作ってくれます。歯がすり減ったり、さらには欠けたりすることも防ぐことができます。

マウスピースなしで、そういう点を意識しながらヴァイオリンに向かうことももちろん可能でしょう。

私がプロのオーケストラでお仕事をさせていただいていたとき、ひとり、マウスピースをいつも使っている方がそばにいました。リハーサルや本番が終わるたびに、彼女はマウスピースを ズズッと音をたてながら(唾液が口からでないように吸っているようでした)口からとりだし、ケースに収めるのをいつも目の当たりにしていたのですが、あまりいい気持ちがしなかったのも確かです。(笑)

検索をしてみると、ヴァイオリンや音楽家の様子に通じている歯科もあるようなので、以下にリンクを貼っておこうと思います。

 

www001.upp.so-net.ne.jp

 

www.bancho-oral.com

 

3連符の表示と指づかい:カイザー27番/ Kayser 36 studies for violin (Svecenski) No. 27 のレッスンにて

「先生、この最初にみえる3の数字、

 これって、指づかいではないですよね。。。??」

 

「そうね。この場合、その音だけみると、Bナチュラルなので、3と書かれてあると、サードポジションを思い浮かべるかもしれないけれど、この場合はそうではないわね。

3つめのAが開放弦になっているし、その後にでてくるEの音も1となっているので、最初しばらくはファーストポジションね。

まず、この3という数字、フォントがイタリックになっているのはわかる?

そして、指づかいには イタリックではなく、別のフォントが使われているのも見えるかしら。」

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Kayser No. 27 beginning

「はい。わかります!」

「多くの場合、3連符を表示する際の数字にはイタリックが用いられるの。

もちろん、あなたくらいになったら、楽譜を見れば、音のグルーピングや、拍子と音の数などの関係から、3連符は3とかかれていなくてもきちんとみつけられると思うけれど。。。?

ね。そうよね?(笑)」

「あ。。。はい。。。(^^; 」

「楽譜に親切に3連符のs表示がある際には、今日、質問してくれたように、指づかいと間違えないようにしないとね。

3の数字が イタリックの場合は3連符、そうでなければ指づかい ね。

確認してくれて、ありがとう。

 

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ヴァイオリンをいじっていないのになぜ調弦が狂ってしまうの?  

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「先生、ぼくは先生に言われたとおり、

 ヴァイオリンをへんにいじったりなんかしてないよ。

 ペグだって、アジャスターだってさわっていないのに

 なんで調弦がくるっちゃうの?」 (8歳のはじめてさんより)

 

「いい質問ね。(^^) 

ヴァイオリンはとっても繊細な楽器なの。ヴァイオリンは木でできているでしょう。だから、湿度が高ければ、空気中の水分を吸収することもあるし、乾燥しているときには、水分を奪われたりもするの。木は水分を吸収すると、膨らむし、水分が奪われると、縮んじゃう。もちろん、目には見えないくらい少しだけだけれどね。だから、今の時期のように空気がとても乾燥していると、ペグの周りの木が縮んで、ペグの穴が大きくなるわ。すると、ペグがゆるみやすくなるわね。ヴァイオリンのレッスンに来るときに、ヴァイオリンを持って歩くでしょう?もちろんケースで守られているけれど、分数ヴァイオリンのケースはフルサイズのものよりも、ヴァイオリンとケースの間の隙間もあったりして、本当に小さな衝撃はヴァイオリンに伝わったりするから、ペグが本当に少し動いてしまったりすることもあるでしょう。

小さな衝撃が伝わるということは、アジャスターに言えるかもしれないわね。

それに、実はね、弦も、伸びたり、縮んだりするの。温度や湿度にいつも反応しているのよ。

このようにいくつかの要素が重なって、調弦は自然と狂ってしまうものなの。

これくらいの狂いであれば、あなたがいたずらにヴァイオリンをいじっているのでないことは明らかよ。心配しなくても大丈夫。(^^)」

 

 

試験官として

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今日は、ASTA-CAP (American Striing Teacher's Association Certificate Advancement Program) の試験官として、数名の生徒たちの演奏を聴き、評価をさせていただきました。

レベル9の生徒たちが2名いると聞いていたのですが、その生徒たちの先生と、試験を取りまとめてらっしゃる先生との間で、連絡がうまくとれていなかった(メールが届いていなかった)というアクシデントがあり、私は結局、その場で1時間ほどただただ待たなければならなくなりました。彼らの演奏を聴けることも楽しみにしていましたし、あまりうれしい時間の使い方ではないですが、仕方ないですね。(^^;)

結局、レベル2の生徒たち3名、レベル1の生徒を1名 聴かせていただきました。

 

このような機会があると、私は生徒たちにとても温かく接していますが、彼らに目指してもらっているものは、とてもよい(高い)ところにある ということを実感します。

私は演奏だけでなく、試験官とのやりとり、お辞儀や、歩き方などまで、ときに言葉をかけ、指導したりします。(もちろん、本人がそのアドバイスを取り入れたいと感じるかどうかは、彼らにまかせていますが、ほとんどの場合、取り入れてくれます(笑))

 

今日の生徒たちは、もちろん、まだまだはじめて間もない段階ですが、それにしても、*音程の不安定さ

*暗譜が不十分

*楽譜を見て弾くエチュードでも、違う音を弾き続けてしまう

などの問題がありました。

緊張のためのアクシデントである可能性ももちろんありますが、アクシデントというよりは、少し準備不足かしら、という印象でした。

また

*試験官にほとんど背中を見せるような形で立ってしまう

*やる気がなさそうに、やりたくなさそうにみえてしまう

恥ずかしがり屋さんなのかもしれませんが、せっかく自分の先生以外の先生に演奏を聴いていただけるチャンスなのですから、もう少し、先生が準備の段階で上手にもっていってあげられたらよかったのかも、と私自身は思いました。

試験は学びの機会なので、なるべく温かい雰囲気を保つようにし、試験の評価を書き入れる用紙には、たとえば

*音程:3指はきちんとラインのところへ。これからどんどんよくなります!

*左手のテクニック:このレベルですでにビブラートをはじめているのはすばらしいですね。このまま上達させていきましょう!

*音のクオリティー:音がとても細いので、腕の重みをしっかり弦にのせて弓を動かしてみましょう! 弓の動かし方はなかなかよいですよ!

*ステージ上での様子:少し自信がないようにみえてしまうので、しっかり地面を感じて、重力を感じて立ってみましょう。これからたくさんの演奏の機会をもつことで、演奏に慣れ、よくなっていきますね。

*曲:すばらしいスタカートができますね。最初の音がとてもよいスタカートなので、ふたつめの音のスタカートも長くせずに同じように弾きましょう。あなたならできますよ!

*リズム:最初から最後までとても安定していましたね、とてもいいですね!

などと、必ず、よい点もみつけて、改善が必要な点に関しては具体的かつ建設的な言葉を添えました

評価としては、基本的にはみなさん 3: satisfied のあたりにしました。

5:excellent 4:very good  とあり、過去に本当にすばらしい小さなヴァイオリニストを何人かみているので、今日の生徒たちは 3 が適当かと考えました。

監督をしてくださっていた先生(私よりもずっとずっと先輩。たくさんの経験がおありになる方です)にも「私の評価があまり辛口すぎないといいのですが」とお話しすると、「もし辛口であったとしても、みんなに対して辛口ならば、それはそれで公平よ」「あなたの生徒たちはいつもとてもよくやっているから」とおっしゃってくださり、また、少し相談したところ、彼女は暗譜に対しては私よりも辛口の評価でしたので、試験のスタンダードを下げないためにも、今日の評価は妥当だったかと考えます。

子供はいろいろなことをしっかり吸収してくれます。子供だからできない このレベルだからまだ早い とリミットをかけるのではなく、学んでもらえることはどんどん学んでもらい、演奏の質を高め(早いうちから難しいものをどんどん弾かせるということではありません)より芸術的な音楽を奏でられるようになる頃には、「音楽」のことをしっかり考えられるようになってもらえるといいな、と思っています。

4月には私の生徒たちが、他の先生の評価やアドバイスをいただけます。決してスタンダードを落とすことなく、(おのおのの生徒にあった)高いところを目指して生徒たちと準備を続けようと思います。

今日はとてもすばらしい経験となりました。

 

ヴァイオリンを乾燥から守るために

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desert in usa

ここのところ、アメリカの私が住む地域は、ものすごい乾燥に襲われています。

数日前には、レッスンをしている場所の湿度計に 湿度20パーセント という怖ろしい数字を見て、仰天しました!!

毎日、加湿器を使っていますが、なかなか湿度は上がりません。

今日は少しよくなって、ようやく 34パーセント です。

目が乾燥し少し痛みますし、頬にもつっぱる感じが。このような状態では、のども痛めやすく、風邪も引きやすくなり、人体にもよくありません。

そして、もちろん、ヴァイオリンにとっても、乾燥しすぎている状態です。

日本のみなさまはたぶん、多湿にお悩みになることのほうが多いのかもしれませんが、冬場はかなりかなり乾燥するとも聞きました。こちらでは乾燥が大きな悩みです。

このように乾燥が問題となるような環境では、少なくともケースのなかは湿度40パーセントくらいを保ちたいものです。

多湿にお困りの環境では50-60パーセントくらいでしょうか。

 

なぜ、乾燥はヴァイオリンにとってよくないのか?

ヴァイオリンには自然の素材である木が使われています。木にはもちろん、多少、水分が含まれていますが、乾燥がひどいと、水分が奪われてしまいます。すると、楽器が割れやすくなったり、よく鳴らなくなったりするのです

 

数年前、私は生徒のレッスン中に、事故で自分の弓を落としてしまいました

カーペットのうえに落ちてくれればそれは防げたかもしれませんが、残念ながら、タイルの上に落ちてしまい、弓先が真二つにおれるという衝撃の事態を体験しました。本当にショックでした。。。(涙)幸い、しっかり直すことができましたが、一度割れてしまったものは、もちろん価値がぐんと下がります基本的にはもう売ることはできませんので、自分で使うことしか考えられません。弓を直す際には、同じ音に戻るはず とおっしゃってはいただいていたものの、私の耳には、同じには感じられませんでした。今となっては、もとの状態での音がどのようなものだったのか忘れることができたので、あまり気にせずに使っています。

また、私の生徒は、フルサイズのヴァイオリンをご自宅で床に落としてしまい、表板が20センチ以上の割れてしまいました。割れた状態を拝見しましたが、こちらも本当にこころ痛むショッキングな状態でした。もちろん修理をすることで、現在も使われていますが、とても残念なアクシデントでした。

乾燥がひどいとこのような事故は起こりやすくなります。

ヴァイオリンを乾燥から守るためにしたいこと

ですので、私は、私自身が乾燥を感じる際には、生徒たち(とくにフルサイズを使っている生徒たち)には、その旨、伝えて、なんらかの対処をするようにうながすようにしています。

私の対処法は:

1.加湿器を使う

2.dampitを使う(もしくはその代用品)

です。

 

加湿器はヴァイオリンを守るためだけでなく、私たちが健康で過ごしやすくいるためにも、とても助かります。

 

dampitは海綿もしくはスポンジのような水分を含みやすい素材の周りに穴のついたゴムがついているものです。水にしばらく漬けて水分を含ませ、ケースのなかに入れておいたり、Fホールから楽器のなかに入れて、楽器の内側から水分を与えたりすることもできるようになっています。

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dampit

余談ですが、この商品名は damp it (それに水分を与えなさい!)を短くしたものですね。最初はそれに気づかなかったのですが、なんだかオモシロイ(^^)

 

上記を持ち合わせない場合には、スポンジやハンドタオルにある程度水を含ませたものをジップロックなどの袋に入れ、針などでたくさん穴を開けたものをケースのなかに入れておくことで代用することも可能です。

また、私はペグの部分だけもう少し加湿したいと思ったことがあり、その際には、少し固めにしぼったペーパータオルをペグの下に、楽器には触れないように、しいて一晩ケースを閉めておいたこともありました。翌日には、そのペーパータオルにまったく水分が残っていませんでした!!!

(私は、楽器の裏板の下に入れてみたこともあったのですが、その際には、楽器に触れてしまっていたようで、楽器が白っぽく変色し、かなり焦りました!!!!が、すぐに元通りになりました。でも、楽器には触れないように、また水分が多すぎてもこのようなことが起こる可能性があるので、気をつけて!)

また、コメントをいただいたことで思い出したのですが、過去にロンドンでご活躍だった私の先生は シャワーを浴びたあとに、バスルームにケースを開けておいておく ということを提案くださったこともあります。かなり多湿になるので、ファンを使って、少し湿度を逃がしてから、そうしてみたことも1度だけありました。

 

乾燥がひどくなる地域にお住まいのみなさま、ぜひ楽器をしっかり守りましょう。

 

クロイツェル 「42の練習曲」2番 / Kreuzer 42 Studies for violin no. 2

まず、カイザー 36の練習曲 そして ドント op.37 を終えた私の生徒たちは、いよいよクロイツェルに入ります。

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Kreuzer 42 studies for violin (Galamian)

私の先生は、ガラミアン先生と勉強されたこともあるので、私はガラミアン版を使っています。

ガラミアン先生の指使いは難しい という声も聞いたことがありますが、若いうちは、いろいろなことに触れたほうがよいですし、やさしく変えるのはある意味誰にでもできるので、「現在は」この版を使っています。

この頃から、バッハの無伴奏作品を念頭に、生徒たちには、フレーズをみつけ、それを形作る という作業をしてもらいます。

これまで、上記のエチュードに加え、たくさんのすばらしい曲の数々に触れてもらいながら、すでに、フレーズという概念や、それを形作ることの大切さ、そして、どのように形作るのか、ということを学んできてもらっているので、この頃には、すでに、多くのインプットが生徒のなかに蓄積されています。

最近、モーツアルトの協奏曲3番を学ぶ生徒が、クロイツェルに入り、とてもいいアイディアを分かち合ってくれました。彼女のなかにしっかり私の指導が伝わって、蓄積して、それをアウトプットできるようになってきたことを強く感じ、とてもうれしく思いました。

これは別の機会にも触れたことがありましたし、自分自身もそうだったのですが、最初のうちは、フレーズのとり方がとても小さくなりがちです。けれども、生徒にみつけさせる、決めさせるという経験を積むことで、小さくも、そして、大きくもとることができるようになります。

また、クロイツェル2番にでてくる、さまざまなボウイングの練習も、それまではこれほどまでのヴァリエーションに出会わないことから、生徒たちはみな、最初とても驚きますが、とてもよい訓練になります。

私がクロイツェル、フィオリロなどを学んだ頃には、ひとつのボウイングで、1曲全部を弾かなければならず、苦痛でしたので(笑)、とくに音楽の道へ進む希望のない生徒たちには、1曲を 例えば、A,B,Cなどと 2つから3つのセクションに区切り、1のボウイングでAセクションをしたら、2のボウイングでBのセクション、3のボウイングでCのセクション、という感じで、全曲に触れながら、すべてのボウイングを体験してもらうようにしています。66種類のボウイングと15種類のリズムヴァリエーションがあるので、それでも、相当なボリュームです。

もちろん、このような作業だけをしていると飽きてしまうので、この2番をしながら、1番、3番、4番…と併用したり、生徒によっては、2番と15番(トリルのセクションがここからはじまりますし、もっと後には、重音もでてきます。)などと、違うテクニックのものを少しづつ与えたり、とさまざまです。

ボウイングの練習といえば、私自身は Sevcik 60 variations をも使いました。

また、別の先生には Tartini The Art of Bowing for the violin を薦められたことがあります。

クロイツェルには、ありがたいことに、このようなヴァリエーションがたくさんでてくるので、上手に使いたいですね。

良薬、口に苦し。(笑)

大変だけれど、血となり、肉となるのは間違いありません。

挫折しないように、温かい言葉をかけながら、生徒たちとがんばっています。

 

 

ダブルバー/ Double bar : カイザー 27番 / Kayser 36 studies no. 27 (Svecenski) のレッスンで

♪ ♪ ♪

「あら? 次のページはみてこなかったの?」

「前のページで終わりだと思ったので…^^;」

「この版では 35ページの一番下の段の最後の小節がお休みね。

 ここが終わりではない というのは どうしてわかると思う?」

「…う~ん…」

「曲の終わりには必ず ダブルバー が使われるの。

ダブル・バーとは文字通り、二本の縦線のこと。

曲中でセクションが変わることを示したり、調や拍子が変わるときに使われるの。

二本の線の太さが同じもの と ひとつの線が太いもの があって、後者は楽曲の終わりを示すものね。

たとえば、この曲、カイザー27番の最後のダブルバーは

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Kayser No.27 at the end

ちょっと見にくいけれど、2本のうち右側のほうが太くなっている、楽曲の終わりを示すタイプのダブルバー。

そして、たとえば、

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Dancla Air Varie op. 89 no. 5 for violin with piano accompaniment

上にみられる、赤で印をつけたダブルバーは、2本とも細いもので、最初のヴァリエーションがここで終わりますよ、ということを示すもの。

つまり、右側が太くなっているタイプのダブルバーがなければ、まだ曲は終わっていない、ということね。

今度は必ず、ダブルバーまで、しっかりみてきてね。」

dearstudents.hatenablog.com

音楽家外来、音楽家医学

私がはじめて演奏からくる身体の支障を体験したのは、在学中に、ブラームスの協奏曲を勉強している頃でした。左前腕の内側がひどく痛み、何をしてよいのか、まったくわかりませんでした。アイシングをしたり、友人、知人にすすめられて、マッサージ(といっても、いま振り返ると、筋肉の knot をとってくださるタイプのマッサージ)に行ってみたりして、何もわからないまま、混乱のなか、そのような期間を通り過ぎました。

プロのオーケストラでお仕事をさせていただくようになると、演奏会やリハーサルが毎日のように、ときに2時間半から5時間以上あった期間も多々あり、右ひじが腱鞘炎(=テニス肘)になってしまいました。この際には、周囲の先輩方の言葉により、痛み止めを服用しながら、アイシングをしたり、カイロプラクティックの先生にアラインメントを調整していただいたり、筋肉を伸ばしていただきながら、乗り越えるも、(今、振り返ると、痛み止めは飲まないほうがよかったとおもっていますので、おすすめしません!)同じ問題は再発。2度目は、学びを生かして、痛み止めを飲まないで、カイロに通いながら、根気よく治しました。

現在は、左親指、左手首に腱鞘炎を患っており、カイロの先生にお世話になりながら、自然治癒を待っている状態です。

英語では、演奏からくる怪我=performance injury という言葉はしばしば耳にしており、大学時代には、アレクサンダーテクニーク = Alexander tecnique や フェルデンクライス = Ferdenkrais に触れる機会があり、その都度、自分の身体の使い方について考える機会があり、大学院卒業後には、別のカレッジで、コンディショニング という、こちらも普段の生活のなかでの効率のよい使い方を考えるというクラスをとり、身体の動きについても興味をもっているので、私がヴァイオリンを指導する際には、身体全体の姿勢から、頭の位置、肩の位置、肘の位置、骨盤の様子、足の様子 などに加え、演奏中の筋肉の様子にも注意を払って教えています。

私の周囲ではそれほど多くはないようですが、実は多くの音楽家が身体の不調に悩んでいるようです。

今回、日本で整形外科を受診しましたが、ドクターは音楽家(私の場合は、ヴァイオリン)がどれほど同じ筋肉を酷使するのか、そして、演奏にはどのような動きが関わっていて、どのような部分に負担がかかりやすいのか、ということは、残念ながらあまりご存知ないようでしたし、音楽家の問題は、しばらく休みが取れたとしても、基本的には弾きつづける必要があることなのですが、弾きながら治す必要性 に対しても、あまり理解がないようでした。

そんなこともあり、インターネットで検索をしてみると、東京女子医科大学の整形外科で音楽家外来が2010年に日本ではじめて設立されたことを知りました。酒井直隆先生はそれより以前から音楽家の診療にあたっていたようで、アメリカでも勉強をされたようです。

私自身は、今回、こちらを訪れるに至りませんでしたが、東京近辺でお困りの方はこのようなところに相談されるのもよいかもしれません。なにかあったときに、すぐに頼れる先生がいるのは、とても心強いものです。

私も先生のことを覚えておきたいので、こちらにリンクを貼っておきますね。

2020年2月7日追記:

もうひとつパフォーニングアーツ医学の存在もみつけたので、リンクを貼り付けておきます。

www.twmu.ac.jp

www.m3.com

 

www.chiba-orthopaedics.com

 

music-med.jp

 

www.kosaihealthcare.com

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ヴァイオリンの肩当て・ショルダーレストの位置

7歳のはじめてさんは、ヴァイオリンを構えてから、ヴァイオリンの位置を何度も直してからでないと、弾き始めることができません

「なんでもじもじしちゃうかな~?(笑)

 きっと居心地が悪いのね。

 先生にヴァイオリンをみせてくれる?」

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そこで、確認したのは、肩当て・ショルダーレストの位置でした。

私自身は、小さな子供を教える際には、肩当てを使わず、滑り止めに、ハンドタオルを2度折り、4枚かさなるようにして使っています。(または1度折り、2枚)

この生徒の場合、ほかの先生と1年半勉強してから私のところにきたため、そのままKUNのショルダーレストを使っています。

私が確認すると、ショルダーレストの位置があまりよくありませんでした。

ヴァイオリンのあご当て(チンレスト)側の一番大きなふくらみのところに、ショルダーレストの太い部分の足を引っ掛けるようにして取り付けて、生徒にヴァイオリンを構えてもらうと、それまで、何度も構えなおしていたのがうそのように、すぐに落ち着きました。

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肩当て・ショルダーレストの位置

もう少し説明を加えましょう。ヴァイオリンの一番大きなふくらみの部分を時計の12時にたとえ、そちらにショルダーレストの太い部分をあてると、ショルダーレストの細いほうの足はだいたい時計の5時のあたりに来るはずです。

まずは、この位置から試します。

小さな生徒の場合は、この7歳の生徒と同じように、これで落ち着くことがほとんどです。

この生徒は、毎回、お母様がきちんとレッスンを見に来てくださり、お家での練習もサポートしてらっしゃるので、お母様にも説明をし、理解していただきましたが、中には、これくらいの年齢で、一人でレッスンに来ている生徒もいるので、その際には、に肩当てをつける位置、肩当ての足が触れる4箇所をヴァイオリンにシールをつけて示してあげることもあります。

 

もう少し大きな生徒になってくると、身体的な強さ、柔軟性、その生徒にとっての自然な姿勢などから、好みもでてきて

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肩当て・ショルダーレストの位置 その2

上の写真のように 11時・4時に近い感じにつけたがる生徒もありました。私自身もティーンの頃は、このような感じの位置にショルダーレストをつけていた記憶がありますが、現在は、12時・5時くらいにつけています。

論理上は、1時・6時につけることもできますが、これは人間の身体の構造上、非常に居心地の悪いものとなると思います。やってみてください(笑)

 

ちなみに、上の写真でご覧いただける私のショルダーレストは Mach One で ダブルレザー というタイプのものだと思います。過去には本当にいろいろな!!ショルダーレストを試した後、こちらにたどり着き、もう随分長い間、同じものを使っています。一番最初に使いはじめたMach Oneのショルダーレストはスポンジ?+レザーだったのですが、長く使用するうちにスポンジ部分がはがれてきてしまい、2つ目にこちらを購入するに至りました。そして、現在はこれと全く同じものは販売されていないかもしれません。。。

とても長く愛用しているモデルではありますが、常に、私にとってこれが一番よい肩当てかしら?という疑問はないわけではありません。

そのうち、こちらの肩当てのレヴューもしてみるとおもしろいかもしれませんね。

ひとついえることは、この肩当ては、カーヴに特徴があるので、あわない方も絶対におられると思うので、(これはどの肩当てに関してもそうですが→)必ず、試してみてからのご購入をおすすめします。